職場ハラスメントの予防対策は、対症療法だけでなく原因療法を加えることが大切です。

職場でのハラスメント問題は、現代の企業経営において深刻な課題のひとつです。この記事では、ハラスメントの基本的な理解から、企業が取り組むべき予防対策、さらに原因療法的な予防対策方法までご紹介します。

また、性格診断でハラスメント傾向が分かる診断ツール(チェックシート、適性検査)の活用方法についても取り上げています。ぜひ、健全な職場環境の維持にお役立てください。

1. ハラスメントとは

ハラスメントとは、他者に対して不快感を与えたり、精神的・身体的苦痛を与えたりする行為を指します。つまり、他人を困らせる嫌がらせ行為はすべてハラスメントとなります。それは、職場や家庭、学校や近隣コミュニティまで、人が関わり合うあらゆる場面で発生する可能性があります。

特に職場では役職による上下関係や成果にする優劣関係がはっきりしているため、上司や同僚間での不適切な言動が黙認されており、それが職場環境の悪化や生産性低下、さらには早期離職や訴訟問題など、職場ハラスメントは軽視できない経営リスクとなっています。

上司からパワハラされる部下

2. 職場で発生するハラスメントの種類

職場でのハラスメントには多様な形態があります。以下は代表的な種類とその特徴です。

  • パワーハラスメント(パワハラ):権力や地位を利用して精神的・身体的に追い詰める。
  • セクシュアルハラスメント(セクハラ):性的な言動による嫌がらせ。
  • モラルハラスメント(モラハラ):精神的に追い詰める言動や態度。
  • マタニティハラスメント(マタハラ):妊娠・出産に関連する嫌がらせ。
  • カスタマーハラスメント(カスハラ):顧客や取引先からの不適切な言動。

3. 職場でのハラスメントの問題

職場でハラスメントが発生すると、以下のような問題が発生します。

  • 職場環境の悪化:組織の風通しが悪くなり、健全なコミュニケーションが阻害される。
  • 生産性の低下:被害者だけでなく、周囲の社員の士気も低下。
  • 離職率の上昇:被害者が精神的ストレスを抱え、退職を余儀なくされる。
悲しむハラスメント被害者

4. 職場でのハラスメント放置の危険性

職場でのハラスメントを放置すると、以下のような深刻な影響を及ぼします。

  • 人材不足の加速:優秀な人材が流出。
  • ブランドイメージの悪化:社会的信用の低下。
  • 経営リスクの増大:業績悪化、訴訟や損害賠償のリスク。
ハラスメントで人材不足に業績悪化

5. 職場でのハラスメントの予防と対策(対症療法的)

職場でのハラスメントの発生を防ぐためには、以下のような取り組みが重要です。

  • 研修の実施:全社員にハラスメント防止研修を行う。
  • 社内ルールの策定:会社として明確な行動指針を示す。
  • 相談窓口の設置:被害者が安心して相談できる体制の構築。
  • アンケート実施:社内調査でハラスメント有無を確認。

5-1. ハラスメント予防の課題

  • 表面化しない陰湿なハラスメントの存在。
  • 一時的に予防できても、ハラスメント傾向の強い人が在籍し続けるリスク。
  • ハラスメントの原因が個人や環境に依存していて発生条件の予測が難しい

5-2. ハラスメント対策の課題

  • ハラスメントの事実が隠される可能性。
  • 発生後でしか対応できない対症療法的な処置
  • 対処法が個人や環境によって異なるため、予防対策の標準化が難しい

6. 職場でのハラスメント予防対策(原因療法的)

これまで以上にハラスメント発生を防ぐためには、以下のような原因療法的な取り組みを加えることが重要です。

  • ハラスメントタイプを理解する:様々なハラスメント分類して特徴を捉える
  • ハラスメント性格適性を理解する:ハラスメントを引き起こす原因となる性格適性を捉える
  • ハラスメントと性格の因果関係を理解する:ハラスメントに起因する性格気質を捉える
  • ハラスメント傾向チェックシートを活用する:性格適性からハラスメント傾向を把握する
  • ハラスメント適性検査を活用する:性格適性からハラスメント傾向を未然に認知する
ハラスメントの傾向と原因をデータから理解する人

6-1. ハラスメントタイプを理解する

ハラスメントは主に以下の5つのタイプに分類できます。無数あるハラスメントを個別に予防対策するではなく、ハラスメントタイプに合わせて予防対策することが効果的です。

  • 隠匿支配権力型:権力を使い精神的に追い詰める。時間をかけて狡猾に支配するため周りが気づきにくい。
    • 例)モラハラ
  • 支配権力型:権力を使って高圧的に追い詰める。長期的に屈服させる。
    • 例)パワハラ
  • 感情権力型:権力を使って高圧的に追い詰める。短絡的なことも多い。
    • 例)セクハラ、マタハラ
  • 立場利用型:自分の立場や社会的風潮を利用して相手を困らせる。
    • 例)カスハラ、逆パワハラ
  • 無神経型:相手の気持ちを考えずに困らせる。悪気がないことも多い。
    • 例)スモハラ、スメハラ

※適性検査ポテクト「ハラスメント傾向分析シート」より引用

ハラスメントタイプ一覧

隠匿支配権力型

普段は感じの良い人を演じますが、ターゲットの前で豹変します。自分が権力を得る(ハラスメントできる環境になる)までは鳴りを潜め、準備が整ったところで態度を急変させます。隠し持っている欲望や冷淡さは、複数回の面談でも見抜くことが難しいため、親しい人間関係まで含めた調査が必要となります。

ハラスメントを発現させないためには、必要以上の権力や裁量権を与えないこと、閉鎖的な環境に置かないことが大切になります。

支配権力型

普段から自分よりも立場が弱い人に冷たく高圧的で支配的な一面を覗かせます。さらに、自分が権力を得る(ハラスメントできる環境になる)とこれまで以上にその態度が顕著となります。ただし、面談の場ではその傾向を隠すことがあるため、数回に及ぶ掘り下げた面談や関係者へのヒアリングが必要となります。

ハラスメントを発現させないためには、必要以上の権力や裁量権を与えないこと、組織として高圧的な態度や支配を許さない姿勢が大切になります。

感情権力型

普段はその傾向を見せませんが、気持ちの油断や感情的な場面で冷たく威圧的な一面を覗かせます。さらに、自分が権力を得る(ハラスメントできる環境になる)と発生のハードルが低くなり頻度が増します。また、形式的な面談の場ではその傾向が見て取れないため、気の緩む場面や感情的になりやすい場面での確認が必要となります。

ハラスメントを発現させないためには、必要以上の権力や裁量権を与えないこと、組織としての規律と監視が大切になります。

立場利用型

普段はその傾向を見せませんが、自分が守られた環境の中で優位な立場になったときに威圧的な一面を覗かせます。また、精神的に追い込まれて感情的になったときに態度を急変させます。この傾向を面談で見抜くことは簡単ではありませんが、自己防衛的な他責傾向や非共感性の深堀りが発見のヒントとなります。

ハラスメントを発現させないためには、必要以上に閉鎖的環境での権限を与えないこと、ストレスを与えて精神的に追い込まないことが大切になります。

無神経型

普段から周りを気にせずに他人に無関心で無神経な一面を覗かせます。さらに、自分が権力を得る(ハラスメントできる環境になる)と周りが注意できない状況になり歯止めが効きません。形式的な面談の場ではその傾向を隠すことがあるため、深堀りの中で感じる他人への無関心さや非共感性の確認が必要となります。

ハラスメントを発現させないためには、組織として周りを気遣えない態度を容認しない姿勢、早期段階からの注意や指導が大切になります。

6-2. ハラスメント性格適性を理解する

ハラスメントをする人の性格(気質)には、主に以下の5つの性格特性が関与しています。加害者(加害者予備軍)への闇雲なアプローチではなく、ハラスメントを引き起こす性格要因に対して予防対策することが効果的です。

  • 冷淡性:他者に共感できない冷淡性
  • 無責任性:防衛的で他責思考の無責任性
  • 自己愛性:優越と称賛を求める自己愛性
  • 支配性:他者を操り執着する支配性
  • 偽装性:狡猾で印象操作する偽装性

※適性検査ポテクト「ハラスメント傾向分析シート」より引用

ハラスメント性格適性一覧

6-3. ハラスメントと性格の因果関係を理解する

どのようなハラスメントを発生させるかは、性格(気質)を理解することで予測できます。各種ハラスメントを引き起こす要因となる性格を理解して、予防や改善のアプローチすることが重要です。

  • 隠匿支配権力型:冷淡性、無責任性、自己愛性、支配性、偽造性 の性格適性がある
  • 支配権力型  :冷淡性、無責任性、自己愛性、支配性 の性格適性がある
  • 感情権力型  :冷淡性、無責任性、自己愛性 の性格適性がある
  • 立場利用型  :冷淡性、無責任性 の性格適性がある
  • 無神経型   :冷淡性 の性格適性がある

※適性検査ポテクト「ハラスメント傾向分析シート」より引用

※例)「冷淡性」「無責任」「自己愛性」「支配性」の性格適性あり → 支配権力型ハラスメントをする可能性あり

ハラスメントタイプとハラスメント性格適性のマトリクス表

6-4. ハラスメント傾向チェックシートを活用する

チェックシートを活用してハラスメント傾向を認知することで、その性格傾向に合わせて予防対策をアプローチできます。ただし、ネガティブな内容の設問になるため、本人がハラスメント調査と察して嘘をつく可能性があるため、関係者によって回答するなどの工夫が必要となります。

  • ハラスメントタイプや性格に基づく効果的な予防と対策が可能。
  • 本人が嘘をつく可能があるが、社内の関係者が回答すれば正しい結果を得られる。
  • 新卒や中途採用など、入社前の段階では調査が難しい

チェックシートのダウンロード(無料)

ハラスメント傾向チェックシート.pdf

※コピーライト記載なら自由に利用していただいて構いません。商用利用は、事前にお問い合わせください。

6-5. ハラスメント適性検査を活用する

適性検査を活用してハラスメント傾向を認知することで、その性格傾向に合わせて予防対策をアプローチできます。適性検査の内容によっては、ハラスメント調査と気づかれずに調査できるメリットがあります。

  • 実施者に気づかれずにハラスメント傾向を調査できる。(適性検査の内容による)
  • 入社試験の適性検査でハラスメント傾向を予測し、極端な傾向者は慎重に対応できる。
  • 管理職試験の適性検査でハラスメント傾向を確認し、昇進後のトラブルを回避できる。
ハラスメント予防対策に適性検査を活用することをひらめいた人

7. ハラスメント傾向分析ツール(適性検査)のご紹介

適性検査ポテクト「ハラスメント傾向分析」は、入社前の選考段階や管理職登用前にハラスメントのリスクを予測できます。さらに、よくあるチェックシートによる簡易診断ではなく、膨大な統計データに基づいた適性検査でハラスメント性格適性を分析する本格診断ツールです。

ハラスメント傾向分析ツールの概略図
ハラスメント傾向分析シート

8. 最後に

昨今、働き方改革が複雑化し、それに伴いハラスメントも多様化しています。従業員と会社を守るためには、ハラスメントの適切な知識とツールによる予防と対策が欠かせません。これまでの対症療法的な施策から、新たに原因療法的な施策まで取り入れ、ハラスメントのリスクを未然に防ぎ、健全な職場環境を維持することが大切です。

これからのハラスメント予防対策に意気込む人